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【沢登り】僕をアウトドアに引きずり込んだオッサンの話 第2話 靴ザック服装はどうでもいい

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【沢登り】僕をアウトドアに引きずり込んだオッサンの話 第1話 靴ザック服装はどうでもいい - たい焼き親子は空飛ぶ夢をみる

前回からの続き
 
 
その悪魔のようなオッサンはこんな人だった。
 
  • 僕が辛そうに歩いてるのを見るのが好き
  • 苦痛に歪む顔を見ながら歩くのが好き
  • もう少しでゴールだからと言いつつ延々歩かせる鬼
 
なんどゴールの言葉に騙されたことか。
 
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オッサンは立ち止まりこう言った。
 
 
「腹減ったやろ?飯にすっけ?」
 
サングラス姿のオッサンは井上陽水にそっくりだった。
 
おっさんは抵当な河原で焚き火を始め、豚肉を串刺しにして焚き火の周りに立てた。
焚き火の遠赤外線と煙に燻された豚肉はとても美味しかった。
こんなにも豚肉が美味しくなるのかと感動すらした。
 
それくらい大自然のなかで食べる串焼きは美味しいのだ。
 
 
 
あぁ、僕は今までいったい何を生き急いでいたのだろうか。
 
この大自然のなかで人間は矮小な存在だ。
 
地上のわだかまりを全て許せそうな気がする。
 
山は不思議だ。
 
 
 
服が焚き火によって乾いた頃、陽水に似た怪しいオッサンは言った。
 
 
「もうちょっと川登るか」
 
 
やっぱこいつは許せねぇ。。。
 
 
 
オッサンは10歳も年上だった。
いったいどんだけ元気なんだ。
 
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イメージ図
 
 
川と山を交互に歩いた。
 
滝も登った。
 
滝壺には大きな丸太が横たわり、滝から転落すればこの丸太に背骨を強打するだろう。
 
本来、無理なら飛び降りればいいらしい。
 
でも今回は無理。
僕は初めて半泣きになった。
 
足をかけれる出っ張りを探しだし、小さな岩に指を引っ掛け体重を預ける。
 
ちょっとずつのぼれてたけどいよいよ足場を見失った。
そもそも岩壁にへばりついてるから足元なんて見えないのだ。
 
オッサンにもつダメだ登れないと言うと
 
 
「そうかー、ダメかー」
 
「もうちょっと頑張れんか?」
 
 
ニヤニヤしながら井上陽水のような顔して言ってきた時は本当に怒りMAXだった。
 
こいつはダメだ、あてにならん。
いつだって自分の力しか頼れるものはないのだ。
 
 
お腹と膝を岩壁に引っ付け、できるだけ滑り落ちないよう接地面を増やす。
 
手元にか細い雑草。
お前に全てを託す!
 
抜けないことを祈りながら雑草を掴み、腹ばいで岩壁を登り出す。
蜘蛛の巣が顔にかかろうがお構いなし。
無我夢中で登りきった。
 
 
緊張と疲労で呼吸が難しかった。
そして腕が疲労のピークを超えていたらしく、猛烈に痛み出した。
指がさっきのカギ状の形から動かないのだ。
 
極限状態になると限界を超えた力が出るのだろう。
とにかく、登ったのだ。
あの丸太に落ちることなく滝を登りきったのだ。
 
やりきった感に浸る時間もなくオッサンと歩き始めた。
 
 
 
数十分後、僕たちは川の中で立ち止まっていた。
 
オッサンは水の湧き出るところを見せたかったらしい。
とても綺麗でびっくりする光景らしい。
 
だが、目の前にあるのはどう見ても雪の壁で、僕たちは雪解け水の中に立っていた。
 
 
どどどどどーーりで体が冷えるわけだ!
 
もうこのオッサンへの怒りとかどうでもいい。
帰らせてくれ。
家に帰らせてくれ。
 
 
残念がるオッサンと生きる屍になった無表情の僕は今まで歩いてきた川をまた歩いて戻るのであった。
 
 
なんだこの不完全燃焼の沢登りは!
 
 
すっかり滝の存在を忘れていた。
 
 
つづく

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